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都営地下鉄の在線情報が提供開始

2019.7.21に追記と修正を行いました。

公共交通オーブンデータセンターの概要

昨今では会社独自のスマートフォンアプリを配信している大手私鉄が増え、更にアプリ内で列車の走行位置情報を提供している会社も多い。四直系統では、従来の「京急線アプリ」に加えて今年から京成側の列車走行位置情報が配信開始されたものの、都営浅草線の西馬込~押上間の在線情報は未だ配信されていなかった。
そんな中で、やっと今年6月より都営地下鉄各線の在線情報が配信開始。これで三崎口から成田空港までの在線情報が取得できる…と思いきや公営だけあってお役所仕事感のある独特な(?)仕様。「公共交通オープンデータセンター」(以下ODPT)というプラットフォームで、これは他社のようなスマートフォンアプリではなく、利用者がスマートフォンアプリなどを作成するためのデータ提供の仕組み。つまり、「データの提供はするから、アプリとかは民間で作って」って感じだ。
「公共交通」と銘打ってるだけあって、将来的には都交以外の事業者からもデータが配信される予定。但し現在は都営地下鉄と荒川線と都バスの情報しか取得できない。リアルタイムの列車走行位置が取得できるのは便利だけど、運行管理システムと密接にかかわっているだけあって先述の通り仕様に路線ごとの癖がある。この記事では電車オタク的な視点からその仕様やデータを眺めてみよう~。

取得できるデータ

まずはどんなデータが取得できるのか見てみる。鉄道関連ではざっとこんな感じ。 全てRESTful APIであり、JSON-LD形式で取得できる。上で書いた以外にも、駅ナンバリングの書体指定が提供されている(PDFで)。

仕様の特徴

特徴というか、使いづれーなと思った点。2019年6月現在の話で、今後改善される場合もある。

登録が面倒

利用登録には氏名、住所、電話番号などの個人情報が必要。オープンデータとはいったい…

列車番号が取得できない

上で列車番号が取得できると書いたが、実際に取得できるのは4桁の数字だ。ここでは正規の列車番号と区別するために「識別番号」と呼ぶ。おそらく、4線区の間で列車番号が重複しても構わないようにシステム内部で振られている番号があり、それが「識別番号」なのではないかと思われる。
この「識別番号」、時刻表とも対応している。よって、識別番号から列車番号を割り出すことができる。これを利用して、列車番号変換リストを作成してみた。→
浅草線(平日)大江戸線(平日)新宿線(平日)三田線(平日),
浅草線(土休日)大江戸線(土休日)新宿線(土休日)三田線(土休日)
京急線泉岳寺始発が未入力、現在正誤チェック中、予告なく変更削除されます。)
変換リストを作成する手間や、ダイヤ改正毎に対応が必要になることを考えると、素直に列車番号を取得させてほしいな~と思う。

「識別番号」の仕様

「識別番号」は時刻表と対応していると書いたが、時刻表に載っていない列車にも識別番号が振られている。
例えば、泉岳寺始発の京急線列車は「識別番号」が毎日変動するため、列車番号を特定できない。また途中駅で車両交換を行う場合も不定期列車扱いとなり、「識別番号」が時刻表とは変わるため、列車番号が特定できない。
これらの列車は変換リストなどで正規の列車番号を割り出すことが困難である。

他社線直通列車の行先が取得できない

走行位置情報には列車の始発駅のidと終着駅のidが含まれている。しかし、2019年6月現在は東京都交通局の駅情報しか取得できないので、始発駅や終着駅のidから駅名を直接割り出すことができない。
駅名変換用リストを作った。

都庁前停車中の列車の進行方向がわからない

ご存じの通り大江戸線は 光が丘~都庁前~清澄白河~都庁前 という6の字運転を行っているが、都庁前停車中の外回りは1回目の都庁前停車なのか、2回目の都庁前停車なのかが判別しづらい。時刻表と現在時刻を比較して割り出すしかないか…?

謎の元住吉始発

三田線平日501K, 703K, 715Kは本来武蔵小杉始発であるにもかかわらず、ODPTの列車走行位置では元住吉始発となっている。実は、この3列車は「回送として元住吉を出庫し、武蔵小杉で営業列車に種別変更を行う」列車である。三田線平日1961Kも同様のパターンだが、こちらは正しく武蔵小杉始発と取得できる。なぜこの3本だけ元住吉始発になっているのか、謎。

幽霊列車?

行先が取得できない列車がある。
その列車とは京急線土休日2424レ、泉岳寺0:04発普通京急川崎行である。6連が泉岳寺に入線する唯一の定期運用、しかも土休日の最終列車とあって比較的知名度が高いこの列車だが、なんと列車走行位置の中に行先データが入っていない。undifined行か…?

「普通」と「各駅停車」

旅客案内上、浅草線は「普通」、三田線と新宿線は「各駅停車」の表記が用いられるが、ODPTでは全ての路線で「普通」と取得される。

成田空港行は2種類ある

京成本線経由の成田空港行とスカイアクセス線経由の成田空港行があるが、これは行先駅idから判別可能。

回送・試運転は表示されない

そういう風になっているらしい。

在線情報が取得できない駅がある

押上、目黒~白金高輪、新線新宿~新宿三丁目を走行中の列車走行位置情報は取得できない。いずれも他社線との境界駅で、押上は京成管理、白金高輪はメトロ管理、新線新宿は京王管理駅である。

代走は反映されないされます

例えば、北総車運用である621Nを京成車で代走した場合、621NKとして運転される。しかし、代走時もシステム上では621Nとして扱われるため、ODPTから取得できる列番・車種情報は「621N・北総車」のままである。代走が車種情報に反映されているのを確認済み。大きなダイヤ乱れ時などの限られたタイミングで代走が反映されないこともあるようだ。

実際にAPIを使ってみる

ODPTのAPIを利用して、リアルタイム列車走行位置情報をブラウザで表示させるコンテンツを作ってみた。
都営地下鉄 列車走行位置情報
一般利用者向けの列車走行位置情報は別の方に任せようってことで、当サイトではオタク向けコンテンツ的な要素を多めにしている。遅延、運休が一目でわかるので、運用調査に役立つと思う。
ほかにもやりたいことは色々あるので、順次更新予定。

2019.7.21追記

どこかのタイミングで「泉岳寺始発の京急線列車」が取得できなくなった。よって、泉岳寺始発の京急線で発生していた"列番が特定できない"などの問題は対応する必要が無くなった。

総括

以上、ほぼODPTへの愚痴みたいになってしまったものの、部分的ながらも運行データが提供され始めたことは、公共交通オープンデータ化への大きな第一歩であると感じている。
今後のデータ提供線区拡大に期待したい。